トップ > 三枝 省吾さん・桃田 健史さん(2010.12.12・12.26放送)

戦後の高度経済成長を支え、戦後の代名詞とも言われる自動車産業
主要製造業の製造品出荷額は約17%、輸出額は約23%と自動車産業は全就業人口の8%を占める日本の最も重要な産業の一つです。
高度経済成長を終え、長引く不況にあえぐ現在、その産業は新たな転換期を迎えています。

次世代自動車やその燃料の開発、世界一と言われる日本の自動車産業の未来について追及していきます。

今、時代はいかに二酸化炭素を削減するかという事が世界中のエコロジーのテーマになっています。
そこで、世界中が開発競争に乗り題しているのが、燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車やプラグインハイブリッドになります。
いろいろなものが出てきているのですが、本を読んでも難しくてわかりません。
今日は、そこを整理して理解しやすくしていくためにこのテーマを取り上げました。

次世代燃料車について話を聞かせてくれるのは、日本自動車研究所・三枝省五さんです。
茨城県にある日本自動車研究所は、広大な敷地内に数々の研究施設があります。
その研究施設ではクリーンディーゼル車や水素燃料車など次世代燃料車の研究を行い様々な車の基準や規格設定を行っています。
衝突試験場では、チャイルドシートの安全検証や車をぶつけでデータを検証し安全な車の基準を定める実写衝突実験などを行いよりよい車社会の進展に貢献しています。

三枝さんは、電気・水素燃料自動車研究部に所属する主席研究員です。
車の安全基準などを策定するために、独自に開発した水素燃料電池を使って研究を行っています。

菅原:最近、新聞を開くたびに自動車産業全体が産業革命くらい新しい時代に入りつつあると特集で書いてあります。これはどのように変わっていくのでしょうか。

三枝:今までは化石燃料を燃やして、エネルギーを取り出すというのが一般的でした。それが、ガソリンエンジンがモーターを通じで電気に変わる事が大きな転換点です。
電気を主体とする車やクリーンディーゼル車のようにガソリンを使わない車が次世代燃料自動車として注目を浴びています。

菅原:プラグインと言うのはプラグから電気を得るという事ですか。

三枝:プラグインと言うのは、外から電気を供給できるという事です。そのため、電気自動車としてもガソリンをエネルギーとしても機能するハイブリッド車の特徴を備えています。その先に、完全に電気だけで機能する電気自動車となります。

菅原:電気自動車は、東京都でも1万5千台あるという事ですが外からはわかりませんよね。

三枝:なかなか目につくものではないと思います。いずれは日常的に目にすることになると思います。

菅原:水素を利用した電気の作り方はどのようになっているのでしょうか。

水素燃料電池の仕組みは、水の電気分解が起こり水素と酸素が発生します。
逆に、水素と酸素を反応させることで電気を発生させることができないか。
これが燃料電池の発電原理です。

水素分子は燃料極の触媒に触れると水素イオンになり、電子を放出します。
電子は銅線から外に取り出され、電気エネルギーとなります。
水素イオンは電解質を通り抜け空気極へと達します。
一方の空気極には、空気中から取り込まれた酸素が同じく触媒で活性化された状態で待ち受け、そこへ水素イオンと電子が入り反応して水となり外へ出されます。
その仕組みを応用したのが水素燃料自動車なのです。
FCVは水素供給装置、空気供給装置、燃料電池、コントローラー、モーターの主に5つで構成されています。

心臓部の燃料電池はスタックと呼ばれ、水素燃料と空気供給装置から取り込んだ酸素などと反応させ電気を起こす小さな発電所です。スタックで生み出された電気はコントローラーで調整され、モーターを回します。
二酸化炭素を出さずガソリン車並みの性能を持つFCVは様々な可能性を持つ次世代自動車として期待されています。

菅原:問題としては、空気を取り込むことは簡単ですが、水素の部分だけ供給する仕組みがあれば、すぐ電気を取り出せることになりますね。

三枝:現状の車だと350気圧、700気圧の非常に高圧のタンクを使っています。

菅原:圧力が高いという事は、爆発しない素材や強度になりますね。

三枝:その基準作りのための実験をしています。安全に使っていただくための容器の基準も決めています。
水素を入れているだけで爆発することはなく、水素が漏れた時や車体が燃えた時などにも安全である配慮の基準を作ります。

菅原:今のところは価格は未定という所ですが、どうでしょうか。

三枝:2015年に一般への普及を目指して、1000万円を下回る価格になるのではないかと。コストダウンの更なる開発を進めています。

菅原:水素はどこで作られるのでしょうか。

三枝:水素をどう作るかによって、作る過程で二酸化炭素が出てしまう事があります。再生可能エネルギーから水素を作ると基本的には二酸化炭素は出さない方法になります。

菅原:水素の充填時間も問題になりますよね。

三枝:3分となっています。ガソリン車と同じくらいの時間を目指しています。

菅原:世界中で同じような研究がおこなわれているのですね。

世界中を飛び回り、自動車産業の動向や行方を追う活動を行っています。
自動車ジャーナリストが提唱する自動車産業の未来とは?

桃田:日本はかなり苦戦するのではないかと思います。
車の保有台数は10億台あります。次の10年間で15億台となるでしょう。
市場としては大きくなります。これが基本的なトレンドです。

菅原:今、車を持っていない人たちが購入するのでしょうか。

桃田:そうですね。新たな国の人たちが買ってくれるということです。
日本の実状としては、トップです。国として結束する力は弱く、アメリカ、中国、韓国は国策として来ています。中国は国家戦略として来ています。
日本は技術で突出しています。中国では規格を先に決めるなどの国家戦略をおこなっています。公共事業のようなことも行っています。日本は国と国との関わりがありません。商売として欠如していた面があります。

菅原:日本の自動車産業の未来はどうでしょうか。

桃田:日本の自動車消費は減ってきます。日本の自動車盛業の今後を考えなければならない。国として代替産業を考える必要があります。日本の自動車産業市場にとっては大転換期にあります。ある所で決断をしなければならないと思います。

様々な技術がどんどん開発していくと、その技術を理解していくのは大変なことです。消費者の行動として、より節約できることなどの視点を持つことが必要です。自動車を乗るべきか乗らないべきかと考えて行動する事がエコには大切です。