トップ > 出雲 充さん(2012年1月8日・1月22日放送)

第28回 出雲 充さん

(2012.1.8,1.22放送)

人口増加による食糧危機。そして、エネルギー資源の枯渇。今私たちの地球は、この大きな問題を前に、頭を抱えています。

そんな中、この2つの問題を一挙に解決できるとして、ある生物が一躍脚光を浴びました。

それが、ミドリムシ。この体長0.1ミリにも満たない小さな体には、59種類もの栄養素を含んでおり、粉末状にすれば簡単にその栄養を取ることができ、またその体からはジェット燃料としても使えるほどの高品質な油が取れるのです。

外敵からの攻撃に弱く、増殖させるのが難しかったこのミドリムシを、世界で初めて大量培養した人物が居ます。

それは、株式会社ユーグレナ社長・出雲充。彼が、大量培養に世界で初めて成功した方法とは。今回は、この2つの大きな問題を一挙に解決する、小さな巨人ミドリムシの正体について迫ります。

菅原:今日のテーマは、ミドリムシです。ミドリムシというのは、植物であり動物であると。油が取れ、それから完全栄養食として、タンパク質だけでなく脂質も同時に取れるような、1つの健康食品が1つの素材からできるということ。これは何か、とてつもない将来性を持ってると思います。

さらには、普通の微生物と違って、二酸化炭素を300倍の濃度でも、貪欲に食べてしまう。こうしたパワーを持った特殊なミドリムシですが、今日はそんな楽しい話がたくさん出てくると思います。

今日のゲストは、株式会社ユーグレナ社長・出雲充さん。彼が初めてミドリムシと出会ったのは、11年前。きっかけは、東京大学在学中に、バングラデシュを訪れたことでした。

そこで目の当たりにした栄養不足の現状にショックを受け、食糧問題を解決するにはミドリムシしかないと、ミドリムシの研究に没頭していったのです。

「必ずミドリムシを活用したビジネスを立ち上げる。」その志を胸に、出雲さんは経営を学ぶために銀行に就職、2005年にユーグレナを設立しました。

そして、その年の暮れ、世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功したのです。今回は、夢を諦めずに追い掛け、世界で初めてミドリムシの大量培養に成功した出雲さんに、ミドリムシの驚くべき能力について、詳しく伺っていきます。

菅原:ミドリムシっていうのは、テレビでちらっと見たことがあるんですけど、やっぱり緑色ですか。

出雲:菅原先生に、実物をお持ちしてるんですけど。

菅原:奇麗な色ですね。

出雲:はい。これが、ミドリムシです。

菅原:この中で生きてるんですか?

出雲:そうです。生きたミドリムシがこの中にたくさん居て、大体大きいミドリムシで大体0.1ミリ、100マイクロあります。小さいのだと10マイクロぐらいのミニミドリムシもいます。

菅原:じゃあ、VTRで、ちょっと見せていただきたいと思います。

出雲:これもう、緑色ですよね。緑色なので、植物と同じ葉緑素を持っていて光合成をする、もう誰がなんといおうと、ミドリムシ、植物なんです、野菜です。

出雲:なんですが、ミドリムシ好き勝手にいろんな方向に運動して、動いて移動してるんですね。これは、植物の能力ではなくて、動物の能力なわけですから、ミドリムシは植物でもあり動物でもある。両方の力がある。これがミドリムシの面白いところなんですね。

菅原:生存条件が厳しいって聞いたんですけど。

出雲:はい。

菅原:冷蔵庫入れとけば、生きてるんですか。

出雲:ミドリムシとにかく天敵が多くて、他のバクテリアや微生物がミドリムシを食べにきて、それでミドリムシが食べられてしまうのが問題なので、冷蔵庫というよりは、もうちょっとクリーンな、ほかの天敵が入ってこないスペースで大事に普段は守っております。

菅原:じゃあ、結構ひ弱だっていったら失礼ですけど。

出雲:はい。いやもう本当に、温室育ちのひ弱な子なんですけども。

菅原:ひ弱な微生物というか、そういうのだと、増殖するのも困難だったりとか、保存が普通クロレラとかは、すごい野蛮じゃない。それとまったく、なんか顔が違うんですね。

出雲:そうですね。他の植物は、自分の栄養価が高くなると、クロレラとかクリとかクルミとかイメージしていただくといいと思うんですけれども、硬い殻で自分の体を守れるじゃないですか。でも、ミドリムシは、そういう鎧のような硬い殻がないので、生のおいしい栄養成分がむき出しになってしまっている。なので、ひ弱で食べられてしまうのを守るのが、私どもの研究であり技術です。

菅原:なんか本当に、お父さんみたいですね。

出雲:いや、もう本当、自慢の娘に悪い虫が付かないように守るのが、私どもの仕事です。

菅原:本当に、なんか熱が入ってるなっていう感じで、本当のお父さんですね。お母さんでもありますよね。

出雲:はい。

菅原:なんか、過保護にしないと生きていけないっていうのは、ある意味すごい大きなハンデですけど、一方では栄養がたっぷりあるっていうことは、すごい今の時代においては、すごくメリットですよね。

出雲:はい。