私たちはその美しい景観を眺める反面、自然災害に悩まされてきました。
国土の7割が山地であることに加え、雨の多い気候、地震の多い日本では年間1000件もの土砂災害が確認されています。
それゆえ、宅地や道路を作る際はコンクリートなどで斜面防護を行ってきました。
それでは、自然の景観が損なわれたり、局地的な地震によっておこる土砂災害を100%防ぐことはできません。
注目を集めています。
段々畑のように斜面が段になっているのがわかります。
土をかたどっているのは木の柵です。
一度も土砂崩れを起こしたことがありません。
国土再生研究所 代表 栗原光二さんです。
土砂災害は未然に防ぐという常識をみなさんに伝えたい。
土偶の中に入ってしまった土は袋の中のネズミと同じです。
今回は土砂崩れを防ぎ、東日本大震災の津波にも耐えたフォレストベンチ工法に迫ります。
栗原さんは、世の中的には知られていない存在です。
ただ、被災地の気仙沼では無傷で残っている事実を考えた時には、これからの被災地の復興の中で大きな役割を果たすのではないかと考えています。
斜面は利用ができなければ意味がない。
安全にするだけでなく、利用と安全を一体で考える。
応援してくれる方の中には、政治評論家の森田実さんもいます。
一年半前にフォレストベンチ工法に出会い講演会や新聞、雑誌などでフォレストベンチを紹介してきました。
菅原:ただ、安全に斜面を守るだけでなく、自然も大切にするという2つの面がありますね。フォレストベンチの仕組みを教えて下さい。
栗原:フォレストベンチでは力の分散、水はけの良さあります。水の力をためないという事です。
従来のコンクリート擁壁は、雨水がたまりやすくコンクリートに圧力がかかります。 フォレストベンチ工法では、大量の雨が降っても水と空気が外に出る仕組みになっています。更なる強度を保っているアンカーで引っ張ることで、地面の安定を図っているのです。
斜面の平地化をすることで重力を利用する。
飢えられた気で美観と地面の強度を保っているのです。
栗原:生まれ育った宮崎の段々畑を思い出した。それを思いついたのがスタートです。
菅原:東日本大震災の津波に耐えたフォレストベンチは、当初から津波に耐えられる予定だったのですか。
栗原:津波は想定外でした。どのような災害に耐えられれば良いかと言うと、大雨と地震でした。大雨が抜けていくという事は、その逆の津波が来ても工学的には同じことであるので、当然の結果だと思います。
菅原:コンクリートで斜面をカバーするよりも費用が掛からないというのはいいですよね。
栗原:コンクリートの値段と比べると5割~7割でできます。
災害を未然に防ぐためには、美しくないとだめですね。そして、メリットもないといけません。
菅原:後継者はどうするのですか。
栗原:私は土木をやる人から後継者を出したいと思っている。土木復活を目指すには環境というものが地球にとって重要だと訴える必要があります。人類の為に必要な技術だと実感してくれる人ならばフォレストベンチの後継者に迎えたいです。
日本の国は高度経済成長期の時代からコンクリートで物を作ることが経済成長を支えてきた。しかし、21世紀は呼吸する斜面をどのように活かすかという事が新しい時代を作る要となってきています。そういった意味ではフォレストベンチ工法は時代にフィットした工法だと思います。
水を外に出す、呼吸する、そして、肥立ちの所には緑を植えて綺麗な美観を保つことができる。土砂崩れを防ぐことができる一石二鳥だと思います。
まだ知られていない工法ですので、ぜひ協力を惜しまないで頂けたらありがたいと思います。