トップ > 井上幸一さん(2012年10月14日・10月28日放送)

第37回 井上 幸一さん

(2012.10.14,10.28放送)

新築しても30年で壊されるスクラップ&ビルドが繰り返された日本の住宅文化。
この考え方に疑問を抱き、木材の長期利用、再利用の重要性を説いてきた人物がいます。

それまで廃棄処分されてきた古材に目をつけ、誰もが簡単に古材を売り買いできる古材市場を作り上げました。
古材は信じられないほどの強さを持っているのです。

本物の木を使えば何代にも渡って保つことができる家造りが出来るのか。
強度も高く思い出が続く古材の魅力とは。

今回は古材をはじめとした国産の木材を使い、日本の山を元気にしたいと奮闘する井上さんの活動に迫ります。

菅原:井上幸一さんは建築家ではないのです。
建築家ではない方がなんと古民家の解体作業の中で使える木材の検定の教育と本を作っています。これらは建築家がやらなければならないのですが、なぜ井上さんが行ったのでしょうか。
また、検定を取った人が5000人を超えています。興味深い話が聞けるのではないでしょうか。

古材倉庫グループ代表 井上幸一さん

古材市場をつくり上げた木のプロフェッショナルです。

菅原:古材という言葉の定義はあるのですか。

井上:古材は築60年以上の古民家から取り出された国産材である問いことです。
これは長持ちする木材が圧倒的に多いからです。

昭和25年に建築基準法ができました。それまでは、伝統工法でやってきた。
それを在来工法に変える方向になった。
それにより新建材を取り入れるようになりました。

菅原:日本の家が世界で一番もたない。日本は30年ですね。これはなぜ異なるのでしょうか。

井上:これは日本の固定資産税の考えによると思います。
30年ぐらいしてくると価値がゼロになるという考え方をしてるためです。

古民家鑑定士という資格を作って、日本の住宅に価値を見出すルールを作りました。
普通の今の住宅にも先人たちの知恵を入れていく、過去の文化を入れていって住みやすい家を作る必要があります。
古いものを残すという事で古材を使っていくのを当たり前の文化にしてもらいたい。

菅原:古材を使用することでよいメリットを出していこうという事ですね。

菅原:無垢の木などで建てられた家は、シックハウスがないですよね。新建材でシックハウスに悩んでいた家族が、無垢の木の家に引っ越したらぐっすり眠ることができたり、アトピーや喘息がなくなったりしましたね。

井上:よく田舎にいくと健康になったと聞くと思います。僕は古材を通じて本物を使いませんか。良いものを長持ちするものを使う事によって、トータルで考えるとコストダウンになります。と提案しています。
壊して捨てるものだと信じていたものが、壊して再利用する事で捨て賃も安くなり、先代の想いも残ります。
木は切られた時期からどんどんと強度が増していきます。
古材をどのように活かすかという事でビジネスをスタートしました。

菅原:このビジネスモデルですが、買い取ることができ、その買いとった古材をストックするのにお金がかかってしまいますよね。買いに来る人が少ないと待ち続けないといけない。その部分をどのようにクリアにしたのですか。

井上:古材を買います。で解体のお話をお伺いすると圧倒的にその後、建築する方が多かったんです。
その方々に古材を使って家を建てませんかというビジネスが生まれました。
解体業者が解体し、材木屋が在庫を取り、建築屋が古材を使って建築をします。

井上:材木屋を増やしたいと思っています。
材木屋が増えないと日本の山がダメになると思っています。
本来の材木屋の一番の仕事は木の事をしっかりユーザーに伝える事が仕事です。

菅原:工務店の木の教育等もしっかりしてもらいたいですね。

井上:工務店が勉強する場、一般の人が勉強する場を提供しています。

菅原:病気の原因の7割が住宅から出ています。健康に関連しているので私の仕事でもありますね。

日本の山を元気にしたい。そんな強い思いを胸に既成概念を振り払い古材市場を開拓してきた井上さんの姿勢から学ぶこととは。

私と井上さんは、100年後200年後の山の再生、日本の再生、子供達の元気な未来。
そして、私たちの資産である家が本当は50年100年もつという現実、資産としての家をしっかり保って生きていくための条件は何なのかという事を確認し合う事ができました。
私自身も空気イオンの研究やシックハウスの研究の中で、アトピーや喘息が消える住宅を目指してたくさんの研究をしてきましたが、今日建築家ではなく材木商の方が木を見つめ壊されていく家をみながらそれをそのままゴミにしてはいけない。使える古材を再利用していく日本人の原点を見つめ直すことが必要ではないかと思いました。