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第41回 五十嵐 俊一さん

(2013.02.10,2013.02.24放送)

戦後の建築ブームから50年経った今、建物の耐震補強が研究課題となっています。

かつては頑丈であった建造物も建て替えや補強が必要になっています。

しかし、あまりに高いコストや人手不足で補強が進んでいないのが現状です。

耐震補強に特化した研究を進め、他には類を見ないほどコストや期間の圧縮に成功させました。

構造品質保証研究所 五十嵐俊一さん

従来の工法の約1/10の日数と低コストで補強できる包帯補強を開発しました。

震度7の地震が何度来ても大丈夫です。

地震大国である日本の中で、包帯で建物の補強を行う新しい方法です。
どんな話が聞けるかお楽しみください。

安くて頑丈であると噂の包帯補強とはどのようなものなのか。
800件を超える実例があります。

その包帯補強の作業はどのように行われているのでしょうか。
包帯補強で使う材料はポリエステル性のベルトと接着剤です。

ワンフロアの作業にかかった時間はおよそ6時間です。

ビルの姿は工事前と変わっていません。

耐震補強というのは新しいものを持ち込むというのが今までの感覚でした。
これは今ある柱を生かして覆います。
鉄筋コンクリートは、元々丈夫であるためしっかりと覆って押さえておくことで、効果が高まります。

菅原:このような工法は周りに驚かれたのではないでしょうか。

五十嵐:コンクリートを覆うようなやり方をしても意味はないのではないかと言われました。

五十嵐:触ってもらうとわかりますが、柔らかくしなやかです。曲げる事もできます。
ただ、引っ張ると強いものです。

菅原:この技術のルーツは日本の伝統技術にあるような気がします。

五十嵐:その通りですね。

菅原:地震の揺れが少ないとはどのようなことでしょうか。

五十嵐:コンクリート自体をしっかりと押さえてあげると固定されて揺れが少なくなります。
今の地震は建物が損傷することで揺れが大きくなることが多くあります。

補強をしていないコンクリートの柱の震度7の耐震実験です。
コンクリートの表面が壊れると一気にコンクリートが崩れていきます。

震度7の揺れを2日にかけて何度も行ったのですが、壊れる事はありませんでした。

比較の映像です。

菅原:これはコンクリートだけではなく、木でもいいのでしょうか。

五十嵐:木造の弱点と言うのは、木と木のつなぎ目がとれてしまうことを補う事ができます。

菅原:包帯補強のコストはいかがでしょうか。

五十嵐:柱一本だと80万円くらいですが、倹約をしてしっかりと見積もりを出せば20万~という事にもなります。
耐震補強は助成金がでるので、自己負担は10万円程度になります。

菅原:包帯補強は一度柱に巻いてどの程度持つものなのでしょうか。

五十嵐:耐久性は100年以上持つと思われます。
これは耐震だけでなく、耐久性や省エネにもなります。
断熱材となったのです。

阪神淡路大震災の時に現地に調査に入りました。
そこで、今まで安全とされていたコンクリートが無残に崩壊している現実がありました。
こんな事を繰り返してはならない。

記録した写真は1000枚以上になりました。

しかし、調査は打ち切りとされました。
耐震研究が今こそ必要とされている。

そして、会社を退職し独立して、今の構造品質研究所を立ち上げます。

菅原:包帯補強を思い付いたきっかけはなんですか。

五十嵐:トルコの震災復旧に協力をしました。そこで、大丈夫と判断した建物が次に起きた地震で壊れていました。
そこで、本当に壊れない耐震補強を考えなければならないと思いました。
包帯補強を思いついたのは、トルコにいる時にふと思いつきました。
あとは、建築に合うように調整をしました。

菅原:今の日本のビルの問題点を上げるとしたら何がありますか。

五十嵐:一般的に言われるのは、老朽化と耐震性ですが、実際の問題は私たちが建物の強さを知らない。という事があります。
コンクリートでできていて、そのコンクリートが裸の状態である事が問題です。
これからは、今まで私たちは材料を届けていただけだったんですが、今度は実際に建物を提供していきたいと思っています。

世界中の人が安心して生活できる安全な耐震技術を開発した五十嵐さんをご紹介しました。
これから私たちがするべきこととは。

菅原:包帯補強のこの技術は、生命の安全から財産を安心して持つことができるという事は素晴らしい事です。
地震と身近に暮らしている私たちの生活の中に取り入れていくことで、生活が大きく変わっていくと思われます。