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第46回 三浦 清貴さん

(2013.07.20放送)

音楽や映像をはじめとした様々な物を記録するためCDやハードディスクなど私たちのまわりには様々な記録媒体があります。
しかし、これらの記憶媒体は長いものでも保存期間がおよそ100年という事をご存じでしょうか。
そんな中、通常の状態で数億年も記録できる記憶媒体を開発した男がいました。

私たちの記憶がはるか後世まで保存できます。


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今回お招きした三浦先生は、ガラスとレーザーという2つの接点の中で仕事をしています。
それは私たち全ての人間にとって大事な情報を数億年の長い期間失わないテクノロジーです。この新しいテクノロジーに対して私たちには関係ない話ではなく、関係のある話として聞いていただけたらと思います。

菅原:先生が研究されているのは、今持っているデジタルデータを長く保存できそうでできない現状を変えることができるという事ですよね。

三浦:日々使うものは長期間保存できなくてもよいのですが、文化的であったり、学術的に後世まで残さなければならないものは長期間残さなければならないという事で、長期間保存する動きが出ています。

菅原:今まではどれくらい長い期間のデータ保存が可能だったのですか。

三浦:単純にデータが長期間保存できるという事になると粘土板や和紙などになります。ただ記録密度は低くなります。デジタルで記憶できるものは記憶密度は高いが、保存環境に対して非常に弱くなります。

菅原:今開発されているのは、長期間デジタルデータを保存できるものですか。

三浦:そうです。石英ガラスは長期間保存が可能であり、そこにデジタルデータを書き込めることが可能になりました。

菅原:長期間というのはどれくらいですか。

三浦:数億年です。

三浦:石英ガラスは光ファイバーと同じ素材のもので、ガラスの中でも長く持つものです。水分であったり、薬品に対しても強いですね。

菅原:そこに書き込むのはどのように行うのですか。

三浦:超短パルスレーザーという特殊なレーザーです。レーザーが光っている時間と光っていない時間があります。

三浦:分子が動くよりも短い間隔で動いています。電子が動く感覚です。そのため熱になる前に伝える事ができます。

菅原:短い時間の方が力が大きくなるという事ですか。

三浦:はい。そうです。

菅原:その力を利用してガラスに傷をつけるという事ですね。

三浦:傷と言うよりも密度を変えます。ガラスの一部分をレーザーを使って圧縮することが可能になります。密度が変わると屈折率が変わり光の進みが変わります。それを読み取るという事です。

菅原:石英ガラスの表面ではなく内部になるのですか。

三浦:そうですね。表面ですと一層しか記録できませんが、内部だと複層に情報を記録できるようになります。

菅原:レーザーはいろいろな種類がありますよね。その中でフェムト秒レーザーと言うのは特殊なんですか。

三浦:フェムト秒レーザーというのは、加工に使われているレーザーではなく、高速で動いているのを止まっているように見えるのと同じように、高速で起こっている化学の反応などを止まったように見えるのではないかという事で開発されたものです。それを実際物質に当てたらどうなるかと興味を持ちました。
その当時、最も短い間で光っているレーザーがフェムト秒レーザーでした。実際に行ってみるとガラスに模様がついているというのがきっかけです。20年ぐらい前ですね。
北海道大学の三沢先生と一緒に行っていまして、最初は非常に面白いという事でした。そして、解明していく流れに入っていきました。

菅原:その後解析していくに当たり、変化が分かってくると思うのですが、どのように解明していったのですか。

三浦:光学顕微鏡で変化があるのが分かりました。最初は何が起こっているのかわからなかったのですが、次第に分かるようになり、密度が変わると光に対する性質が変わるという事がわかました。そこから発展していきました。

菅原:先ほどの小さい中に四層の情報が書き込まれているという事でしたが。それは大変なことですよね。

三浦:四層の情報を書き込むには、表面にデーターを書き込むのではなく、内部に買い込みます。情報と情報の隙間が60ミクロンあります。そのため1cmあれば100層の書き込みが可能になります。

菅原:実用化という段階はどの辺りまできているのですか。

三浦:基礎的な記録の仕方と検出の仕方は完了しています。高速の書き込みや大きなものへの書き込みを加味すると半分ぐらいですかね。残りの半分が前半の半分と同じくらいとは限りませんが。

菅原:フェムト秒レーザーの可能性についてはどのように考えていますか。

三浦:透明なものであれば、透明の内部だけを変化させるという事が出来ます。
結晶も可能ですし、養液の中に磁石を入れてレーザーを当てれば非常に小さな磁石ができます。材料の構造を変えてそこだけの性質を変えて新たな機能が加えられているというのは非常に重要なことです。

菅原:新しい機能が普遍的な価値を持つ。磁石もそうですが、エネルギー変換についても非常に面白いですね。ものすごい大きな新しい開発がありそうですね。

三浦:このデータに記録できないぐらいの事を成果を残していきたいと思います。

今日の話の中で新しい技術の展開として、レーザーを使い石英ガラスの中に情報を書き込み、情報を取り出すことができる。これは石英ガラスなので安価で情報を記録ができるということがわかりました。実用化にはまだ時間がかかりそうですが、実用化されれば多くの人が使用したいと思うのではないかと思いました。