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第47回 平松 正顕さん

(2013.08.31放送)

私たちが暮らす太陽系は、どうやって出来たのか?
生命はどこから生まれたのか?

今、こうした謎を解き明かす天文学史上最大の望遠鏡計画が動き出しました。

南米チリ。地球上でもっとも天の川が綺麗に見えると言われるアタカマ高地。
直径18kmの大地に巨大なパラボラアンテナ群が設置されました。

この望遠鏡を使って宇宙の進化を探る計画がALMAプロジェクトです。

天文学史上最大のALMAプロジェクトの全容や世界最高峰の望遠鏡を作った日本の技術に迫ります。

みなさんはまだお聞きになった事がないのではないのかと思うのですけれども、世界中の天文学者がエネルギーとお金と知恵を出し合った計画が今着々と始まっています。
今までの望遠鏡では見る事の出来なかった世界を解析していく事が出来ます。
今日のお話は難しいかもしれませんが、わかりやすくその新しく観る望遠鏡から覗いた宇宙の話を平松さんに説明して頂きます。

国立天文台チリ観測所助教授の平松正顕さんです。
平松さんは天文学史上最大のALMAプロジェクトにおける日本チームのスポークスマンとして活躍しています。

今日は、平松さんにALMAプロジェクトの全容や日本の技術について詳しく伺っていきます。

菅原:今、壮大な宇宙を研究したい人が集まる中でお若くて参加されていますね。そのプロジェクトはなんですか。

平松:ALMA望遠鏡と言うもので、南米のチリに作った電波望遠鏡です。

菅原:電波望遠鏡と言うのはいわゆるレンズを通して観る世界とは異なりますよね。

平松:レンズで観る望遠鏡は、目で見る可視光をキャッチするものですけれども。宇宙からは可視光だけでなく目ではとらえられない光やいろいろな電波などが来ています。その中の電波をキャッチするのが電波望遠鏡です。

菅原:コンタクトと言う映画の中で、ロマンチックだと思いました。

平松:コンタクトで出てきた望遠鏡ですね。ALMA望遠鏡は全部で66台揃っています。

菅原:世界で一番大きい望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡ですよね。あれを見ても綺麗ですよね。さらに美しく観る事が出来るのですか。

平松:ALMA望遠鏡ではハッブル宇宙望遠鏡より10倍細かく観測することができます。

菅原:可視光のように温度の高い所から出る光だけでなく、マイナスの温度から出るガスや電波も捉える事が出来るんですね。

平松:ガスが集まることで太陽のようなものができるので、数は少ないですけど重要になります。
スタートは宇宙に満ちているガスになります。これが、自分の重力で集まることで星ができます。太陽でしたら100億年ぐらいになりますが、その寿命が尽きるころになりますと、赤く大きく膨らんでいき、超新星爆発などを起こしガスが広がっていきます。

菅原:今回見ているサブミリ波というのは今までは観る事が出来なかったのですか。

平松:ミリ波、サブミリ波というのは星ができるのを観測するのに重要な電波です。それをキャッチする技術が難しい。水蒸気に吸収されてしまうので、日本のように湿気が多い所では観測しにくいということで今まで出てきませんでした。

平松:これはALMA望遠鏡で観測をした惑星が生れてくるところです。生まれて数百万年しかたっていないあかちゃんです。中心の青い所は赤ちゃん太陽になります。周りを赤ちゃん惑星があります。

菅原:私たちの身の回りにある原子が宇宙にもたくさんあるんですね。

平松:これは星が死につつある様子です。真ん中に年を取った星があります。これは一酸化炭素を可視化した様子です。

菅原:遠くの星の状態が詳細にわかるという事ですね。

平松:望遠鏡をたくさん集める事で鮮明にわかり、電波を受け取る情報も多くなります。

菅原:今までの常識が覆されるわけですね。

平松:そうですね。そして、今まで理論で分かっていたことが観測できるようになります。宇宙空間では物質それぞれが特有の電波が出されています。宇宙では炭素が5つ連なっている分子が見つかっています。ALMA望遠鏡では非常に単純な糖が見つかっています。

菅原:糖があれば微生物が繁殖する環境、初期の微生物の餌ですね。

平松:宇宙の成り立ちを考えると、この地球が生れたのは特別なことではないと考えています。

菅原:平松さんは何歳から宇宙が好きになったんですか。

平松:小学校一年生の時に、両親から星座早見盤と宇宙に関する本を貰いました。科学雑誌を読むのも好きでした。学研の漫画をよく読んでいました。
中学時代には天文学者にあこがれを持っていました。科学雑誌を読むと天文学者になるにはこの大学やこの先生がいるという所から情報を得ました。一番いろいろなことができるのが東大でした。日本の天文学の環境は素晴らしいと思います。