トップ > 神谷 信夫 さん(2013.11.24放送)

第50回 神谷 信夫さん

(2013.11.24放送)

資源の枯渇、二酸化炭素による温暖化など地球の未来を大きく左右する事態が起きている昨今、この問題を一気に解決する夢のような技術が実現に向けて動き出しました。



大きな問題がありました。それは光合成のメカニズムの解明です。
そのメカニズムは複雑でこれまで解明できていませんでした。

この光合成の謎を解き明かした人物が神谷さんです。
最後にして最大のなぞと言われていた光合成の仕組みを解明し人工光合成の実現へ向けて大きな一歩を踏み出しました。

人類に豊かな恵みをもたらす人工光合成の仕組みやその未来に迫ります。



神谷先生は、人工光合成と言う新しいジャンルの研究をされてきました。光合成で行われている反応の化学式を世界で初めて明らかにし、アメリカのサイエンスという雑誌の中で2011年に世界で最高の重大発見の一つとして取り上げあられました。難しいと思いますが、楽しみに話を伺います。

光合成に関する研究分野で世界トップクラスの生物学者です。
およそ200年にわたって世界中の科学者たちが解明できなかった光合成を神谷さんの研究チームが解明しました。
この研究成果は科学雑誌ネイチャーに画期的な成果として取り上げられるほど人類にとって大きなものでした。
人工的に光合成を行い太陽エネルギーを人間が使える有機物に変える研究はこれからの地球を救う大きな鍵となっています。

菅原:地球全体で空気中の酸素の量はどのくらいですか。

神谷:空気中の酸素の量は約1200兆トンと言われています。光合成により一年間でどれくらいの酸素が出るかというと2600億トンです。桁が違います。これは大気中に沢山の酸素があるという事です。大気中の酸素が光合成により入れ替わるには、4600年となります。地球の歴史から考えると短い時間です。

菅原:私たちの知っている光合成の知識は中学生で止まっているような気がします。

神谷:大学の理学部の学生が読む教科書には詳しく書いています。大事な所が分かっていないという所があります。

菅原:光合成に関して100%解明されているというイメージがありますが、光合成は研究が難しい分野だったのですね。

神谷:植物が光合成を行っているのは小学校でも教えられます。一般の人は、光合成が解明されていると思っています。しかし、専門的なことであるために、解明されていない事を説明する事がありません。私たちのように専門的なものは、半分もわかっていないといった状況です。

菅原:今回、解明された光合成のメカニズムはどのようなことですか。

神谷:このパネルに書かれた流れの中には化学的な反応が沢山あります。水から酸素が発生るカ所がわからないでいました。

神谷:ゆがんだ椅子の構造をした触媒の中心まで到達した水分子が太陽の光を浴びて分子全体が活性化されて2個の水分子から酸素分子を生み出します。従来はゆがんだ椅子がわかっていなかった。明確にこの構造という事が分かるとこれを利用して人工光合成ができるようになる。その設計図ができる。

菅原:人工光合成は地球環境から見たら非常に大きな意義のある仕事になりますよね。二酸化炭素を地球上から減らすことができますね。

神谷:人工光合成で二酸化炭素を循環させることができる。化石燃料をどんどん燃やして私たちの生活が維持されている。空気中の二酸化炭素が増えていき、資源がなくなり人類に破滅になると想像せざるを得ない。人工光合成でもう一度有機物に戻すことができれば循環させることができるのではないか。すると人類が持続的に生活できるのではないだろと思っています。

神谷:10年かけたが解明されなかった。さらに10年かけて解明する事ができた。10年前まで私は理系の職員としていい測定装置を開発する研究を行っていた。良い解析をする事と良い結晶を作るという事の両方が必要であった。作ろうとするという事は、自分で一番難しい仕事ができる装置を作る事使いこなす事ができる事が必要になります。

菅原:違うジャンルの経験が光合成の解明に役立ったという事ですね。

神谷:私は同じことをやっている思いでした。大きな流れはずれていませんね。人工光合成のフロントに行ったのは偶然です。光合成の研究をやりつつ装置の研究を行っていました。

菅原:今日は難しい話を楽しくお話ししてくれてありがとうございました。
神谷先生のお話を伺っていまして、科学者として一つのことに向かって進むときにとても明るく楽しんで一つの科学を楽しんでやり続ける事は素晴らしい生き様ではないかと思いました。二酸化炭素からメタノールを作る大きな目標を持ち進んでいるのは、次なる科学者への手本となり理想形となるのではないでしょうか。