石油や石炭の化石資源が枯渇する現在、この再生可能な資源をいかに有効活用するか。
これが日本の大きな課題となっています。
中でも山から運び出されることなく無駄に廃棄されてきた間伐材は、その活用が強く求められてきました。
しかし木材は、燃えやすい、腐りやすい、虫がつきやすいなどの理由から建築資材から敬遠されてきました。
木材の弱点をすべて克服した新たな不燃木材の開発に成功しました。
今回は浅野さんに常識を覆した不燃木材の仕組みやこれからの未来を切り開く不燃という新たな価値観についてうかがっていきます。
今日、お迎えしたのは、セルフネンという木の中にあるものを含浸させることで今までの木材が750℃でも20分も燃えない木材になる。それだけでなく、煙も出ないガスも出ないというすごい性能を持った木材を開発した浅野さんとどんな話ができるのか楽しみに話を伺いたいと思います。
世界初の燃えない木材の開発に成功しました。
一流の建築士として活躍していました。
しかし、母の実家の火災を切っ掛けに不燃木材の研究に没頭していきます。
家族が暮らしていた木造家屋が炎に包まれ音を立てて崩れていく様を見て、浅野さんは人の命を守る燃えない木材を作る。と決意したのです。
それから十数年世界で初めて燃えない木材の開発に成功しました。
その技術は日本が世界に誇る技術として新日本様式100選にも選ばれました。
菅原:不燃材というのは木造建築の中で夢の素材だと思います。新しいものに取り換えようというのは日本人の健康を守るという根本から考えたら一番大事ですよね。
浅野:燃えないという定義は建築基準法では750℃で20分間です。
菅原:セルフネンの含浸しているものは何かという事なんですが、一言でいうとなんですか。
浅野:ホウ酸塩になります。木材用の濃度を上げる事で不燃となります。溶けにくいホウ酸を作り上げたのが新しい技術となります。
菅原:有害ガスが出ないというのは、燃えないためにガスが出ないという事ですか。
浅野:燃える時に硼砂が200℃で溶けます。これがホウ酸などをコーティングする事でガスの発生を抑えます。
菅原:いろいろな試行錯誤をするのにどれくらいの時間がかかりましたか。
浅野:液を作るのに3年ぐらい。木材に含浸させるのに4年ぐらいです。厚みとしては5cmぐらいまで含浸していきます。
液だけで60種類ぐらいあります。
浅野:通常ですと着火しますが、燃えません。
和紙も通常、ホウ酸を使うとバリバリになるのですが、折っても曲げても問題ありません。炭化はしますが、燃えません。
浅野:木材は二酸化炭素が出て非常に有害ガスが出る。
木材から有害ガスが出ないように抑える事が出来たら新しい建築素材になる。
炭化をする事によって人の命を助けて、財産を守ってかつ二酸化炭素も80%削減できる。
菅原:二酸化炭素を80%削減するというのは、日本の木材を使うという事ですよね。
浅野:もちろん国産です。まず間伐材を一番先に使わないといけないという事です。地産地消でやりたいですね。
各都道府県に1カ所ずつ間伐材の処理工場が出来たらいいですね。最低でも20カ所は作るべきだと思っています。
今、公共建築物木造化という法律ができました。間伐材を使用する事で鉄筋よりも安くなります。
菅原:建築家として活躍していましたよね。
浅野:27歳の時に1級建築士を取得し20年近く活動しました。
いくつか賞も頂きまして、大型木造構造では林野庁長官賞を頂きました。
菅原:大きな建物を木造で作るという発想が当時はなかったですよね。
浅野:2000平米近くの建物です。
菅原:これだけの賞を取っている方がなぜ部材建築の研究へと進んで行ったのですか。
浅野:実家の火災がきっかけです。不燃材料と書かれていても燃えてしまいます。これはおかしいと思いました。木造は燃える、腐るカビが生えるという欠点をなくしたい。そして山をきれいにしたいという思いがありました。
菅原:これは世界中で広がる技術だと思いますね。
浅野:新日本100選として世界に誇れる技術として紹介されました。建築だけでなく様々な分野があります。
日本は木造建築の技術が卓越しています。ここにきて新しい木造建築を作りたいと思います。新しい性能評価が必要になり、新しい木造建築ができるのではないでしょうか。
菅原:政府・官庁が認可を与えるというのは新しい木造建築が出来上がりますよね。
63年振りに木造建築の素晴らしさが認められる時代が来た。この新しい時代に浅野さんの技術は花開きつつあると思います。日本のみならず世界中に広がり、公共施設を作る際に必要になるでしょう。5年後、10年後、日本の公共施設が日本を代表するそれぞれの地場で育った木により作られます。山の木がどんどんと使われて山が生き返るという時代が来るのは感動的なことです。