菅原:実験室レベルで、ちっちゃいところだと簡単にできることが、意外とプラントレベルになると、思わぬところで、え、こんなはずじゃなかったのにっていうことも起こるでしょ。
高尾:そうですね。たくさんありましたね。やっぱり、実験室ではなかなか起こらないこと、例えば、雑菌が入っちゃったりだとか、そういうことは、実際に工場でやってると、雑菌が入ってにおいが出てきちゃったりっていうのはありました。
菅原:それは、エタノールになる前に、まず、シュレッダーしてちっちゃい布きれの、綿の布きれに、酵素を入れて、それで何時間かぐるぐる混ぜるわけですよね。その段階で?
高尾:そうですね。酵素がどんどんグルコース、糖を生産していくんですけども、その糖をめがけて雑菌が入ってきちゃって、食べちゃうと。
菅原:糖はおいしいですもんね。
高尾:おいしいですからね。
菅原:だから腐敗細菌にとっても、こんなにおいしいものはないぞーみたいな。いったいどっから来たんだろう、みたいですね。それって、もともと汚れた布きれについてたのか、それとも空気中の落下雑菌みたいなものなのか、どっちなんでしょうね。
高尾:やっぱり、エタノール作る前には、布は1回滅菌したりするので、おそらくですけども、工場の中の空気だとかから入ってきたんじゃないかと。
菅原:実験室の中だと、意外と清潔できれいだけど。
高尾:実験室の中はきれいですね。
菅原:大きなプラントになると、そういうところってのは結構そんなことでもないんですね。
高尾:なかなか管理しきれないんで、やっぱりそこまで空気をきれいにするのは難しいですね。
菅原:タンクの中に入れるときに、私としては、そういう綿製品以外は、前処理の段階で人間が仕分けしてんのかなと思ったんです。ボタンは取って、とかね。チャックは外して、とかね。綿じゃないやつは、悪いけど使えないから、酵素が効かないから、純綿100パーセントのものだけ、シュレッダーかけて、使いましょうっていうふうに思えますけど、それだとコスト高なんですか。
高尾:そうではなくて、われわれ、いったん引き受けさせていただいて、全部、エタノールに変えます。エタノールにならない部分って、やっぱり残念ながらまだあるので、そこは残っていくんです。残ってったものは、そのまま燃やしちゃうと、何やってるんだか分からなくなっちゃうので、それもちゃんとリサイクルできるように、いろんな方法を考えて。
菅原:ボタンだとか、綿混の、50パーセントしか綿が入ってないものを、そこからエタノールを取るという至難の業を、仕分けをしないでちゃんと一緒くたでできるシステム開発ってのは、特許をお取りになったわけですか。
高尾:そうですね。幾つかやっぱり特許も出願して、これはいけるっていってる技術のところは、やっぱり特許は出願しないと駄目ですね。
菅原:そうですね。そこが一番ご苦労であり、同時に、頭を使って、よっしゃーみたいな感じですよね。
高尾:そうです。
菅原:何年前ですか。
高尾:最近のことですね。やっぱり、それは、実証実験のプラントができて、その中で、問題がたくさんあって、どうにか解決しないといけないっていうことを考えた中で出てきましたね。
菅原:あと、土の中から、綿の繊維を、酵素分解が非常に速やかになるっていうものを発見されたっていうのを、他の番組を見たんですけど、それもすごいなと思ったんですが。
高尾:今治では、タオルの産地で、長い間タオルを生産してきたので、その土地にいっぱい綿繊維があったんですね。
菅原:土地っていうのは、土の中に?
高尾:土の中にも、周りにいっぱいあったので、そこに繊維を分解する微生物ないかなって、いろいろ、土掘りながら探したら、見つかったんです。
菅原:土の中にあるだろうってのは、人から教わったんじゃないんですか。
高尾:思いついたという。
菅原:それってすごく天才的ですよね。
高尾:いやいや、どうか分かんないですけど。
菅原:だって、従来、繊維といわれてるそういうものを分解する酵素は、既に確立してて、これとこれとこれは、繊維を分解してブドウ糖になるよっていうのは、業者さんから買うことができる、酵素として売ってますよね。だけど実際にはあんまりちゃんと働いてくれないわけですよ。
高尾:なかなか、それだけじゃ働いてもらえないですね。
菅原:温度を調整しても駄目?
高尾:温度だとかペーハーだとかを調整しても、なかなか難しい。
菅原:限界で、これじゃ、いくらたっても100パーセントやるには何十時間、何百時間かな、みたいな。
高尾:そうです。何カ月とか。
菅原:それじゃ仕事にならない。
高尾:ならないです。
菅原:それで、なんとかして、すごくパワフルな酵素を見つけたいという動機付けになって、それで、土にあるかもしれないと。
高尾:そうですね。いろいろやりましたけども。
菅原:どのくらいまで短くなったんですか。
高尾:条件にももちろんよるんですけども、24時間だとかにはなる。
菅原:20時間はスーパーミラクルな時間ですね、最初の何百時間から見たらね。