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ロープウェイに乗って山頂付近のホテルに到着した菅原を出迎えてくれたのはブルクホテル・レッヒのオーナー、ペーター・ブルガーさん。

ブルガーさん:私達は木をうまく再利用することをずっと考えていました。熱湯を使って暖房をまかなっている訳ですね。今や、このホテルの暖房はすべて熱湯によって暖められているのです。私達が完全に地元のバイオマスの巨大暖房に切り替えてから(ホテルでは)年間でおよそ130万Lの灯油を使わなくなりました。

ここが、村の暖房を一手にまかなっている巨大暖房施設。ここでは建築廃材などの木くずを燃料にしてその熱で熱湯を作っています。これが木質バイオマスシステムです。

エネルギーコンサルタントのヘルムート・ブルチャーさんに話を聞いた。

菅原:日本でも今、バイオマスが非常に注目されていて、自然エネルギーの一種としてバイオマスを使って地域暖房をするとか、イメージはあるのですけれども、スケッチの段階で、障害があるとしたら、それは予算がかかりすぎるからということなんですが、実際にどのくらいの初期投資をしたのか教えてほしいのですけれども。

ブルチャーさん:この私たちのレッヒ村の巨大暖房ができたのが1999年です。当時の建設コストが約13ミリオンユーロ、1,300万ユーロ、大体16億円弱です。そして、非常に重要な施設であったということもありまして、2010年にさらに700万ユーロ、大体9億5,000万を投資して、今の規模の巨大暖房が出来上がりました。合計約2,000万ユーロ、約22億円を投資してこの巨大暖房が出来上がったわけです。建設費のうちの大体30%はオーストリアの国と州から補助金をもらっています。このような補助金があったからこそ、建設費をまかなうことができました。

菅原:今、ここでやっているこの施設は、民営とか、それから、行政がその組織の中で運営しているのか、どちらですか。

ブルチャーさん:いろいろな方がここに携わっています。例えばこの巨大暖房の施設は、基本的には民間の会社として動いているのですけれども、26%の株はこのレッヒの自治体が持っています。さらに26%の株をこの地元の州のエネルギー会社が持っています。合わせると52%になるのですけれども、残りの48%はレッヒの一般市民が1999年に投資して買った株です。ホテルを経営している人、ペンションを経営している人などもいますし、一般市民もいたのですけれども、レッヒの将来のためにはこのような施設は大切だと住民が考えて出来上がったのがこの施設です。

菅原:それから12~13年たっているわけですが、今、運営上、赤字にはなってないのですか。

ブルチャーさん:もちろん、当初の建設費が非常に高かったということもありまして、最初の数年間は赤字でした。でも、ここ5年間以上は毎年のように黒字として、当時この施設に投資した人たちに対しては、株主として利益がちゃんと出るようになっています。ただし、私たちの目標はここに新たな施設でお金を稼ぐことではありません。

それ以上に私たちにとって大切だったのは、このレッヒの村に再びきれいな空気を取り戻すことでした。1990年代までこの村ではたくさんの灯油を使っていました。たくさんの排気ガスが煙突から出ていたのです。でも、このような施設を造り上げて、そして、灯油をこのレッヒの村からなくしてしまおうと私たちは考えたのです。現在では、このシステムのおかげで、年間をとおして約800万リットルの灯油を使わなくて済むようになりました。