トップ > 大和田哲男さん(2009年10月11日・10月25日放送)

第1回 大和田哲男さん5

2009.10.11,10.25放送

菅原:自分の技術を守るのっていうのは意外と大変なことだと思うんですよね。大勢の共同研究する大学の先生方によって、守ろうとしなくても守ってもらえてるっていうのが現実ですか。

大和田:実は今、私がご一緒してる先生たちは、こういう技術の開発に、お願いするんじゃなくて、開発は私がやります。そしてデータ取りを各先生たちがやるという、そういうグループを組んでるんです。情報開示っていうんでしょうか、それが表に流れないっていうのは、少なくても今日の段階まで私の頭の中にみんな入ってると。先生たちはあくまでもデータ取りをやって、それからまたほかの先生と。ですから、必ず同じ機械でも、何人かが集まらないと開発できないという、そういうスキームをつくってます。

菅原:こういう新しい技術っていうのは、権威のある人があれは違うっていうと、すぐみんなね、そっちのいうことを聞いちゃったりすることが多いんですけど、そういう面はなかったですか。

大和田:ありました。やはり出るくいは打たれるっていうんでしょうか。いっぱいありましたけども、私どもは間違いなくお客さまにガードしてもらったんですね。自分たちが作っている料理、自分たちがやっているものが間違いないと。

大和田:それからもう一つは、医学の先生たちが急きょ学会発表をどんどんされまして、同じ食品の機械でこういうことができますよっていうことをやっていただいたもんですから、日本の中ではちょっと被害がありましたけど、海外の方はどんどん浸透したと。

菅原:じゃあ海外の科学者とかの方が頭が柔らかいっていうことはあるんですか。

大和田:それは非常に難しい言い方なんですが、間違いなく海外の先生たちは実際やった結果で分析して、いいものはいいってすぐ認めるんですね。この辺はやっぱり外国の先生ってすごいなと。

菅原:そういう意味では、国際的なところにどんどん乗り込んで、いろんなところで使ってもらえるように働きかけるっていう意味でも、すごく積極的におやりになったんですね。

菅原:これからね、CASの可能性っていうのは海外でも注目され、海外でも基礎研究し、国内でもやるっていうことになると、今までの反対のいろんなついたてみたいなのがあったでしょうけど、そういうのはやがては全部なくなって、同時にその可能性っていうのはすごいですよね。

大和田:つい数カ月前に元総理と経済産業省の大臣もおいでになって、国として、日本の一次産業を何とかしなきゃいけないっていうことが、ようやく政府の方々の方が動きだされてきたっていうことは、やっぱりいいなと思っております。

菅原:そうですね。豊作貧乏っていう言葉があるように、あらゆるものが取れ過ぎると市場価格が下がるから、泣き泣きしてるっていうのが今までの一次産業に従事していた人たちの現実ですよね。そういうものを現地で加工食品になりにして冷凍しといて、それを市場にだすと、素晴らしいものができると。

大和田:生の文化がずっと、農業、漁業を潰してきたんですね。きょう取ったやつを、何時間以内に売っちゃわなきゃいけない。すると、買い手側の値段を付けられて、渋々その値段に合わせると。ところが今、私は、限界集落にしろ過疎の地域にしろ、そこには非常に資源が豊富にあるんです。それを一次加工、二次加工までしまして外食向け、どこ向けっていうふうにしまして、生産者が初めてブランドとして売ってくことができると。これが今、私がやれることじゃないかなと思ってます。

菅原:そうですね。特に日本の四季っていうのは、素晴らしい食材を作る能力があるわけですよね。寒流、暖流があり、温度差があり。温度差があるところには必ずいい食材がどんどん生産できる。だから、そういうものは、さっきおっしゃったように、輸出食材として素晴らしいですよね。

大和田:間違いなく世界の耕作面積が、水で小っちゃくなってきております。海水の温度が上がってきてると。そういうトータルでやりますと、日本という国が、資源が、今まで石油みたいな資源はないですけど、食料としての、一番人間にとって大事な資源が日本には僕、あると思ってんです。

菅原:そうですね。だから、これから食糧危機の時代も来るかもしれない。そういうときにも、大型の冷凍庫を造っていったときに、5年前、10年前の食品もフレッシュに食べられるとなると、あとは電気代なんですよね。それは全然かからないですか。

大和田:蓄熱効率っていうものを開発しまして、それから、今、京大の先生たちと電気エネルギーっつって、太陽エネルギーに置き換えていくという中でどんどん開発しますから、石油使うとか、そういう電気じゃないものができると。

菅原:まあソーラー付いちゃえばね。ソーラーシステムで集めたぐらいの電力でオッケーなんですもんね。

大和田:将来的にはそうなると思います、間違いなく。

菅原:そうすると、最初のイニシャルコストとして、それを建てるコストが一番かかるけど、メンテにかかる費用はさほどではないと?

大和田:そうですね。

菅原:食糧危機の時代でも、食料がいつも満ちあふれてる社会をつくることができるということになるわけですね。

大和田:そうですね。

菅原:すごいですね。楽しみですね。本当にやる仕事がいっぱいあって大変でしょうけど、ぜひこれからも頑張ってください。

大和田:ありがとうございました。

 

大和田哲男

1944年生まれ。菓子製造装置メーカー、食品メーカーを経て1966年6月、菓子製造機械を製造する株式会社大和田製作所に入社。1975年に「生クリーム凍結機」を開発。1989年2月、アビーインダストリー株式会社(1998年株式会社アビーに社名変更)を設立し、CASの開発を推進。2001年に最初の実用システムが完成して以降、その研究には世界中から注目が集まっている。2008年7月号の米経済誌『フォーブス』では、「ミスター・フリーズ」と題し、1920年代にアメリカで急速凍結が登場して以来の画期的な新技術としてCASが紹介された。