菅原:瞬時に消えちゃうのにちゃんとメモリーに残るっていうのは、脳の構造が人間と違うんじゃないかと思うんですけどね。
平田:一般の方はまだまだチンパンジーってそこまで、こんなことできないだろうって思われてる方が多いと思うんですけれども、やってみるとできる。それも特殊なチンパンジー、天才なチンパンジーができるっていうわけじゃなくて、一定の過程をへて訓練というか、練習をすれば、どのチンパンジーもできるようになるということですね。
菅原:チンパンジーたちはうれしいんですか。
平田:うれしいと思いますね。やっぱり嫌がることはやらないというか、あの実験場面自体、別に強制参加ではないんで。
菅原:強制じゃないんですか。
平田:ええ、来ても来なくて。
菅原:行きなさいとか、いわないの?
平田:いわないです。
菅原:お尻、叩いたりしないの?
平田:しないですね。来ても来なくても自由なんで。だから、嫌だったら、やらないはずなんで。でも、みんな、好きこのんでというか、比較的楽しそうにというとちょっと擬人的かもしれないですけど、喜んでやってると思いますね。
菅原:1時間ぐらいやるんですか。
平田:長い場合だと1時間。もっと長い場合だと2時間ぐらいやる場合もあります。
菅原:すごいですね。人間だったら、5歳、10歳で1時間はもたないですよね。なんで、人間よか集中力あるんだろう。
平田:不思議ですね。そういう意味ではすごい集中力は確かにありますね。
菅原:それから、子どもっていうのは何歳ぐらいからあれに参加するんですか。
平田:つい最近、1歳のチンパンジーが1をさわるっていうところを練習し始めたんで、1歳からですかね。
菅原:英才教育じゃないですか。すごいですね。
平田:そうですね。それも別にお尻、叩いて、やりなさい、やりなさいっていってるわけじゃなくて、お母さんがそもそも隣でやっているのを見ていて自発的に興味を持って、お母さんがやっているのをやろうとしているっていうのがベースにあって、じゃあ、1歳の子ども用のを別に作ってあげようかっていうことで始めたのがきっかけなんですね。
菅原:そうすると、親がやっているのを横から手、出して、押したがるでしょ? おもしろそうだと。親の方は譲るんですか。それとも、譲らないんですか。
平田:親は譲らないですね。そこはちょっと厳しいというか。
菅原:ぴしっていう感じ?
平田:自分のエサを取られようとなると、ちょっとどけなさいっていう感じですね。
菅原:じゃあ、私が今、やってる最中だから、ちょっとそこをどきなさい、みたいな。それがいいんだ。
平田:そうかもしれないですね。
菅原:じゃあ、人間も、親が一生懸命、算数やって、子どもが来たらシッてやれば、すごい勉強する子になったりするんですね。
平田:やっぱりモチベーションをどう持っていくかっていうのは問題だと思いますね。そういう意味では、やりなさい、やりなさいっていわれるよりは興味がある段階で、別にやらなくていいよっていうふうにいわれる方が、もっと、じゃあ、やってやろうっていう気になるのかもしれないですね。
菅原:やっちゃ駄目っていうといいんですね。
平田:かもしれないですね。
菅原:ぴしってやるといいんですね。やっぱりモチベーションっていう自発性とか、お尻を叩かないとか、親がやってるモデルがいかにも楽しそうだと、そばで見てる方は、見てるとよだれが垂れるぐらいやりたくなるというか。
平田:やりたくてもできないっていうふうな方が実は、やる気はずっと持続するのかもしれないですね。
菅原:それはおもしろい。人間に対する警告であり、アドバイスであるかもしれないですね。
平田:かもしれないですね。