菅原:700ミリにチャレンジしたときに、大きな技術を上げるならば3つぐらいあると聞いているんですけど、何と何がそうなんですか。
原田:陶器形状を変えるっていうところが1つです。あとはトルネードっていって、節水にすごいかかわってる技術でして、満遍なく水を1周させて洗うトルネード洗浄にどのぐらいの時間を使えばきれいに便器の内側の汚れがとれるのか。次がゼット洗浄って呼んでるんですけども、汚物を便器から排出するときにどのくらいの量を使えば確実に排出できるのかっていうところを今回はやってます。
エコ君:ここで原田さんがいっていたトルネード洗浄とゼット洗浄を詳しく紹介するエコ。
まずはトルネード洗浄。1カ所の穴から水を出して渦を巻く水流で、便器内を満遍なくしっかりと洗う洗浄技術エコ。
続いてはゼット洗浄。内蔵タンクから加圧されて勢いのよい水で汚物を排出する洗浄技術エコ。この2つの洗浄技術の水を700ミリリットル減らすことが原田さんの課題。
たかが700ミリリットル、しかしその壁は厚かったエコ。いろいろな角度から数値を割り出し、幾つもの図面を作成。
そしてパソコンの3Dモデルを使って水の流れをシミュレーション。今度はその形状のトイレを作り、実際に水の流れを検証。日夜その実験を繰り返し、ついに700ミリリットルの節水を成功させたんだエコ。成功の裏には並大抵ではない努力があったんだエコ。
菅原:トルネードっていうのはぐるぐるこういうふうに渦を巻いて流れていく水ですよね。角度っていうのがあんまり急だと1回転したらすぐいっちゃいますよね。だから2回か3回ぐるぐる回してから下に流れた方がいいんでしょう?
原田:そうですね。
菅原:ということは、このすり鉢の形によって回転数の回数が決まってくる気がするんですけど、そういうことなんですか。
原田:そうですね。ボールの形状によってこっち側に水が届きにくいとか、こうすると届きやすいとか、そういうところっていうのは形で変わってきますので。それこそ焼き物なので、いろいろ決めたつもりでも実は焼き上がってきたら形が違うとか、そういうことが多々あったんです。効果を検証するために流体解析っていう技術を用いて。
菅原:それは物理学ですよね。流体力学とかでしょう?
原田:そうですね。そういう学問を用いてシミュレーションというか、パソコンで流れを見ながら汚物が実際流れるのかっていう検証等もするんですけども、それでやはり効果があると思って実際にクレイモデル、粘土で形状を作っていくんですけども。
菅原:でも粘土を焼かない状態で使ったら抵抗が大きいでしょう? 粘土、粒子粗いから。
原田:粘土というのが例えば試作の段階で形状を作るために粘土をつけて、その上から陶器と同じように表面がつるつるになるようなシートっていうのをまた新たに張っていくんですけども。
菅原:いわゆる実験室モデルですよね、それは? そのパソコンレベルでは計算上OKできれいに流れてくれる、3Dモデルでうまくこのような渦をかいてピュッと流れるっていうのが実際粘土でやってもダメなときもあるんですか。
原田:粘土でやっても駄目なときもあるし、例えば流体解析とそれから粘土ではOKでした。工場のラインでまた作ります。その作ったものを評価するとまたできなかった。いろんな外乱というかそういうところも含まれて陶器って出来上がってくるので非常に難しいところでした。
菅原:工場まで行くんですか。
原田:行きます。何でこういうことが起こっていうのかっていう原因を突き止めなければ先に進めないので、工場の方といろんなお話し合いをして、何が影響しているんでしょうかっていう話ですね。
菅原:工場の人は職人さんだから、私はもうこうでこうでこうなんだからこういう結論をすでに出てるのよなんていっちゃったら駄目だよね。そこはていねいに。
原田:よく怒られることはたくさんありましたけど、やっぱりそこで理論でパーッと攻めていくのっていうのって、やっぱりそっぽ向かれてしまいますので、そこは真摯に熱意を持って。
菅原:要するにパートナーシップですよね。要するにどちらが偉いじゃなくて一緒に開発してんですからよろしくみたいな感じですよね。そういうふうなところまでの熱意を相手に持ってもらうことが成功の秘訣ですよね。