トップ > 辻谷 政久さん(2010年3月14日・3月28日放送)

第13回 辻谷 政久さん3

(2010.10.10,10.24放送)

菅原:今日は辻谷さん、ありがとうございます。よろしくお願いします。ここにあります2つは、重心が整ってる物と整ってない物。

辻谷:はい、狂ってるのと。

菅原:どうやったら、その重心が合ってるかどうか、分かるんですか。

辻谷:平らなとこへ置けば、はっきり分かります。こう動きます。

菅原:ころころ転がっていくんですか。

辻谷:こういうことになるんです。

菅原:重心がぶれてるから。

辻谷:で、重心が出てると、動かないんです、斜めに置いても。

菅原:普通でも、上の方が空気が入って固まるから軽くなると。それ以外にもたくさんの法則をご自身で見つけられたわけですよね。

辻谷:そういうことなんです。普通の鉄に、鋳物というのはシリコン、カーボン、マンガン、リン、硫黄、これを鋳物の5元素っていうんですけど、それが混ざってるんです。

それ以外に、スクラップやなんか使いますから、それ以上、もっといろんな材質が少なくて7種類から8種類の材質がごちゃごちゃになって、溶かされて出てくるんです。炉の中で重たい物質、軽い物質がだんだん分離されて。

菅原:今、聞いてると、なるほどって一瞬で分かったような気がしますけど、それを見つけるためにご自身でキューポラのある、鋳物屋さんで修行されたんですよね。

辻谷:そういうことです。でも、そこまで研究しないと納得できないですよ、自分自身が。

菅原:誰も教えてくれない、科学的な結果をちゃんと仮説、検証していくわけですよね。

辻谷:そうですね。

菅原:できあがった物はもう100万、500万とかってするんですか。

辻谷:いいえ、とんでもない。国内で販売されてるときは、スポーツ屋さんからの小売価格は1万5,000円から1万6,000円ぐらいです。オリンピックの場合にはただです。無償提供です。

菅原:無償提供なんですか。ブランドになるからいいじゃないですか、みたいな感じなんですか。

辻谷:そういうことです。

菅原:どのぐらいかけてからオリンピックに出られるようになったんですか。

辻谷:オリンピックの規格になったとき、これ、国際陸上競技連盟の国際規格というのがあるんですよ。それになったのが1980年か82年ごろです。それからが砲丸との闘いになったんです。それまではいいかげんだったんですよ。指定された目方、この大きい方の砲丸、7,260グラムなんですけど、それよりも軽くなければ、50グラムでも100グラムでも重たいものはみんな合格。その100グラムぐらい、どうでもいいっていうのがプラス5グラムからプラス25グラム、わずか20グラムになっちゃった。

菅原:20グラムの差っていうと、この20グラム減らそうとすると、何ミリ削るんですか。

辻谷:何ミリどころか、コンマ幾つです。1ミリの10分の1。

菅原:1ミリの10分の1削ると、20グラム減っちゃったり、増えちゃったりするわけですか。

辻谷:はい。

菅原:じゃあ、ちょっと量が多いからと思って削り過ぎちゃったら。

辻谷:もう通用しないです。 聞き手 もう2度と取り返しはつかないですよね。コンピュータ使わなければ無理でしょ、って思いますけど。

辻谷:ええ、そういうこともあります。コンピュータ制御、NC旋盤っていうんですけど、これで作ってもらったんです。ところがなんと、自分でやって不良率が20~30%、NCで加工したら70%以上。

菅原:100個のうち70球は駄目なんですか。

辻谷:ええ、重さが。NCの方がきれいに丸くできるんです。

菅原:外見にはきれいでしょ?

辻谷:ええ、そうです。ところが実際に目方を量ると、70%が重かったり、軽かったり。

菅原:そういうものなんですね。

辻谷:はい。