菅原:今、若い方々に夢を持たせるということで、そういう技術の大会をされてると伺ったんですけど。
辻谷:工業高校だけじゃなくて、今、大会社に教えてるんですよ。
菅原:それは1番大事ですね。
辻谷:全国高校生ものづくり大会っていうのが2001年から日本であるんですよ。そこの審査員やってるんです。その高校にいろいろ技術を教えたりなんかして、その人たちが今、ものすごく腕が上がってます。その最たるものが大会社に教えてるんですよ。
菅原:それは1番、大事ですね。大会社の人たちって意外と頭、使わない部分があって、商売はうまいんだけど、自分で技術を開発しない部分もね。だから、そういうところに技術指導で、こういうふうなところが大事なんだよって目のつけどころ、それから、自分の頭で計測する、すべてのものを教えられてるわけですね。次の世代に砲丸のボールを作るという技術、継承可能なんですかね。
辻谷:今、首ひねってます。
菅原:要するに、最後の最後のところの重心合わせがセンスの問題になっちゃうような気がするんですね。
辻谷:そうなんですよ。
菅原:だから、その2つ前ぐらいまで行けるけど、最後の1個まで行くときに、14工程の最後のところが、はたして継承可能なのか、私は聞いてみたいなと思ったんですね。
辻谷:いずれ、やれるでしょうけど、あと何年かかるか。年数の問題ですね。僕が生きてるうちにうまくやってくれればいいけど。
菅原:結局、自分が砲丸投げのボールを作りたかったかどうかにかかっちゃいますね。
辻谷:そうですね。
菅原:でも、日本中で辻谷ジュニアが続々と、全国の学校で増えてるということは、そういう意味ではまたすごいことですね。
辻谷:これ、ありがたいことですね。
菅原:そういう中から、次なる時代を支える、さまざまな技術。
辻谷:が、生まれてくると思います。
菅原:それはもしかしたら、宇宙開発に伝わるものかもしれないし、家庭のなべになるのか、あらゆるジャンルが開発されていくべきですから。じゃ、夢がありますね。
辻谷:はい。
菅原:ありがとうございました。
辻谷:いいえ、いいえ。
ーーこれからの未来を切り開くために、職人、辻谷政久から学ぶべきこととは。
菅原:随分、失敗されてる。鉄の砲丸を作るに当たっても、最初は重心なんて考えもつかなったから、100個作って70個、失敗作品。その30個だけしか成功しない、その中で、もしかして、重心かなと思ったり、キューポラのある溶鉱炉まで行って、そこで1年半も修行されて、不良品、たくさん作られてる。その失敗の中に成功の答えが発掘されるのを待ってるがごとくに、日々、失敗作を前にしながら、なぜ失敗したのかを考えられて、完璧なものを作るところまで本当に時間をかけていかれたという。私たちが技術立国日本としてこれからも生きていくためには、学校の教育は、たくさん失敗して、それをおおらかに見守って、手を出さないで、自分で考えて、失敗の中から成功の秘訣を学びとるような教育と、その環境。それは日本がこれから生きていくために最も大事なことだっていうことを教わりまして、私もすごく納得しました。本当にうれしかったです。