ーーそんな松本農園の事業方針を従業員はどのように感じているのでしょうか。
従業員1:生産から出荷まで一貫してできるので、自分でものを作ってお客さまに届けてるっていうかたちがよく感じられるので、その点がすごくいいと思います。
従業員2:他に頼んでないってことで、自分らでしっかりやらないといけないってことで、その責任感というか、気を使っています。
ーー一貫した自社生産体制の中で責任感を高め、自立した農業経営を実現させている松本農園。
そんな松本農園の経営努力は一日の業務終了時にも見ることができました。
作業を終えた従業員がまず向かった先は、事務所に設置された一台の機械。このタッチパネルを使って一日の作業状況を打ち込んでいたのです。収穫量、そして、使った肥料、農薬の種類や濃度までを詳細に記録していました。
従業員3:操作は簡単ですね。パソコンできない人でも使いやすいです。
ーーこの誰でも操作が簡単にできる生産情報管理の仕組みを作ったのが松本さんでした。
松本:生産情報管理システムっていうのは、まずは自分たちの仕事をやってきた記録をきっちり管理できる、われわれの生産の見える化。無駄の削減。作業も無駄なことをやってる場合っていうのは多々あるわけですね。無駄を削減することによって効率のよい生産、コストダウンを図るための効果っていうのもあると思うんです。
ーー松本さんは、この生産情報管理システムで蓄積された詳細なデータをさらに別のかたちで有効利用していました。
野菜を詰めた袋に付いているこの13桁の数字を使って、お客さんに生産情報を開示していたのです。
この数字を専用のホームページに入力すると、種植えから収穫まで、いつどのような作業を行ったのか、そして、使用した肥料や農薬の種類まで一目で分かるのです。
さらに、栽培した畑の位置を航空写真上で確認もできます。世界でもこのような生産情報管理システムを導入しているのは松本農園だけで、別名「畑が見える農園」とも呼ばれています。
実は、ITを使ったこれらのシステムは、もともと医薬品の営業マンだった松本さんの経験から生まれたものでした。
松本:医薬品の業界においては、薬の効果効能も大事なんですけど、副作用のこともちゃんと伝える必要があるわけですね。そうしないと医薬品自体も売れていかないという部分もあります。われわれは、それを農業の世界においてもまったく同じことが起こるという認識で、情報開示をするということを取り入れてきました。最終的にお客さまに信頼していただけるという存在であり続けることがわれわれにとっては重要だと思ってます。